ピアレビュー②:見る側から見られる側へ

〈LAND FES〉の安藤さんは、具体的に、天候要件に左右されることと、道路の使用・占有の許可という2点を挙げ、「路上には魅力もあるけど、ハンデもある」と話します。前者については、屋内では求められない雨天時の対応を必ず孕むことや、参加者の熱中症等の安全対策に十分な注意を払う必要性について触れました。また、後者では、道路使用許可がなかなかおりないだけではなく、そもそも該当道路の管轄が誰(どこ)なのかからリサーチが必要で、たらい回しになることもしばしばだと話します。「気にしすぎると何もできなくなってしまうし、自分たちの判断の線引きが難しいところ。法解釈だけでなく、お住まいの方が不快に思うようなことはやりたくないですから、」と地域への配慮のポイントについて悩みを抱えていると言います。これには〈谷中のおかって〉の渡邉さんも同調して「企画に対してのネガティブな意見を言われる機会は多くないが、必ず開催前に約200件の近隣住民へのご挨拶に伺うようにしている。直接顔を合わせて話すことが重要なのではないか」と応えました。
また、参加者に対しては、〈LAND FES〉では「説明しすぎないこと」を心掛けていると言います。「言葉で説明しすぎてしまうと、考え方をしばってしまっているような気がする」と安藤さん。色々な、その人固有の見方を参加者に持ち帰ってもらうために、まずはプログラムに飛び込んでもらえるような設計にしているといいます。実際に〈LAND FES〉のワークショップに参加した渡邉さんは、「限られた時間の中で、建物の中でワークショップをしているうちに、気づいたら外へ出ていて自分が『見る側』から『見られる側』になっていたのが貴重な経験になった」と振り返りました。さらに、〈谷中のおかって〉の《バラエティロードSANYA》でも、「できるだけ自由度を保ちながら、個人の文化的な時間を『文化出見世』として路上に持ち出してみてほしい、という気持ちがある一方で、運営上の時間的リミットや公共空間を使う上での物理的な制限もあるので、その塩梅の見極めが難しい」と、自身の現場に引きつけて省察しました。

まとめ

4団体が登壇した本プログラムでは、同じ隅田川流域に位置し展開するアートプログラムの主催者たちがかかえる共通の問題意識「もやもや」を知り、その交換と検証を試みました。ピアレビューを通じて、フィールドや関わる人が違えど、「かがみ」となる「隣のあなたの現場」のエピソードをなぞることが、大きな学びのヒントを与えてくれるかもしれません。

(レポート:冨山紗瑛)

「すみだ川アートラウンド・ハブ1」開催概要
日時:2022年10月15日(土)15:00-18:00
会場:東京藝術大学 千住キャンパス7ホール[東京都足立区千住1-25-1]
開催形式:会場参加およびオンライン配信
定員:50名程度(事前申込制)※オンライン配信あり
受講料:無料

登壇団体:
NPO法人 トリトン・アーツ・ネットワーク
ムジタンツ
NPO法人 LAND FES
一般社団法人 谷中のおかって

統括プロデューサー:熊倉純子(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科 教授)
モデレーター:森隆一郎(合同会社渚と 代表)
企画運営:吉田武司、韓河羅