ラウンドテーブル ARTs×SDGsの可能性をめぐる対話と実践
隅田川を舞台に展開するSDGsプロトタイピング
第二章:サーキュラー・ガバナンス
電気を生み出す屋台をつくろう!」レポート
撮影:長谷川 麻里絵
日程
2023年9月17日(日)、9月24日(日)、10月1日(日)、
10月8日(日)、10月15日(日)(雨天のため中止)、
10月22日(日)、10月29日(日) 各日14:00-16:00
会場
隅田川テラス(江東区越中島1丁目地先 東京水辺ライン 越中島発着場付近)
プロジェクトパートナー
東京藝術大学 美術学部絵画科 油画専攻 壁画第二研究室 岩間賢、NPO法人トッピングイースト、千葉大学 環境デザイン研究室 原寛道、浜野製作所、I JUST INC.
2030年実現に向けて設定された17のゴールと169のターゲットからなるSDGs。
「すみだ川アートラウンド・ラウンドテーブル」は、隅田川流域におけるSDGsの実践を目指し、昨年度より活動をはじめました。
「第一章:サーキュラー・ダイアローグ」では、SDGsが掲げる目標に関連する3つのテーマ「再生可能エネルギー」「食」「モビリティ」に取り組んでいる方をゲストに招き、ゲストと参加者の方との対話から隅田川流域におけるARTs×SDGs実践の可能性をめぐって、数々のアイディアを出し合いました。
「第一章:サーキュラー・ダイアローグ」(2023年度)の様子
撮影:中川周
今年度は「第二章:サーキュラー・ガバナンス」と題し、第一章での対話を通して生まれたアイディアから、「再生可能エネルギー」分野における実践を中心に進めました。隅田川テラスは個人・組織の活動で幅広く一時利用されていますが、電気等のインフラが整っていないエリアもあります。数々のアートプロジェクトの試行を通して持続可能な社会の実現に取り組む岩間賢さん(美術家/東京藝術大学 美術学部絵画科 油画専攻 壁画第二研究室)にご相談し、再生可能エネルギーを生み出し、給電ができる仕組みを隅田川テラスへと持ち込むことからさらなる対話を生み出す「給電できる移動式屋台」を試作することになりました。
屋台製作の作業は、実際にテラスで多様な人のニーズを踏まえながら、参加型で実施をしたいとの意図から、昨年度の対話に参加した公益財団法人東京都公園協会が主催するテラスの利用促進を目的とするイベント「すみだがわオープンテラス2023」の一プログラムとして実施させていただくこととなりました。「すみだがわオープンテラス2023」は越中島のテラスで計6回(全7回実施の予定が、天候不良により1回中止)行われ、屋台製作は毎回、飛び入り参加も可能なオンゴーイングのワークショップ形式で実施されました。
ここからは、「給電できる移動式屋台」の製作プロセスを、写真とともにダイジェストでお届けします。
第1回 2023年9月17日(日)
昨年度の対話に参加した公益財団法人東京都公園協会が主催する「すみだがわオープンテラス」は、さまざまな事業者・団体が新たな広場としての隅田川テラスのありかたをともに考え、実践していく試みです。
「第二章:サーキュラー・ガバナンス」は、大学を飛び出し、賑わい溢れる隅田川テラスで幕を開けました。キッチンカーやマルシェが出店されているなか、テントを張り、屋台全体のデザイン・制作を担う岩間賢さんを中心に、原寛道さん・浜野製作所さんが特別に制作した金具や木材でイメージを膨らませながら、屋台のアイディアを出し合いました。
第2回 2023年9月24日(日)
初回で出したアイディアを実際に形にすべく、屋台の土台を作り出しました。厳しい暑さのなか、のこぎりやビスの作業にとまどいながらも、だんだんとコツを掴み、楽しみながら作業を進めました。土台を作り終えた後は、再生可能エネルギーパネルを屋根に取り付けた場合、切妻(二面構成・正面から見ると三角形に見えるデザイン)・片流れ(一面構成)、どちらの方が発電しやすいか・使いやすいかを全員で話し合いました。
第3回 2023年10月1日(日)
前回の話し合いの結果を踏まえて、いよいよ切妻屋根を取り付けることになった第3回。だんだんと大工作業にも慣れ、参加者同士、声を掛け合い、安全面にも気をつけながら作業を進めました。
第4回 2023年10月8日(日)
暑さも和らぎ、秋の過ごしやすい気候のなかで開催された第4回。今回は場所を移動し、東京都公園協会のみなさんがいるインフォメーションの近くで、屋台をより使いやすくするための作業を行いました。注目度の高い場所での作業によって、通りがかりの人が足を止めることも増え、一般の方との屋台利用についての会話が弾みました。
第5回 2023年10月22日(日)
雨により中止となった10月15日を挟んで、2週間ぶりに開催された第5回。用意していたボルト(ねじ)がうまくはまらず、急遽新たな資材購入に走るなど、ささやかなハプニングも生じましたが、昨年度も参加されたI JUST INC.の前川さん立ち合いのもと、再生可能エネルギーパネルを取り付け、「給電できる移動式屋台」が完成しました。
10/22 撮影:長谷川 麻里絵
最終回 2023年10月29日(日)
ハロウィンを間近に控えた最終回。東京都公園協会が管理する都立公園のイベント情報やかいけつゾロリによるクイズなどを配信するアプリ「TOKYO PARKS PLAY」のPRの場として、完成した「給電できる移動式屋台」を使用しました。他とは違う屋台の作りに目を留める方が多く、より広く一般の方が肩の力を抜いて、日常生活のなかから「ARTs×SDGsの可能性」を考えるきっかけをつくることができました。
「第二章:サーキュラー・ガバナンス」では、昨年度の活動が対話の場のみで構成されていたのに対し、大学から外に出て、実際にアート以外の行政やものづくり分野の事業者とものづくりを行い、つながりを深めたことで、隅田川流域におけるARTs×SDGs展開の可能性を広げることができました。
隅田川流域におけるSDGsの実践を恒常化していくには行政との連携が不可欠です。隅田川テラスの管理運営を担う公益財団法人東京都公園協会のみなさんに活動趣旨に賛同いただき、この試みを「すみだ川オープンテラス2023」の一環として実施できたことは大変意義深い機会となりました。
「給電できる移動式屋台」はテラスにおける再生可能エネルギー利用の拡大に向けたテンポラリーな形での応答です。この屋台が活躍できる場を増やし、より多くの人々の気づきにつなげていくことができるよう、今後も行政・事業者のみなさんと連携しながら、積極的に稼働させていきたいと考えています。
レポーター:松本知珠