ピアレビューは仲間を探す営みでもある

若林さんは、評価を活用する上で「事業計画の段階で評価者を巻き込み、事業への関心を高めることが効果的」だと言います。計画段階から運営者と評価者が認識を共にすることで、事業現場と乖離しない評価のあり方を設計できる可能性が高まるためです。

また、ピアレビューの難しさである「同類他者のピア団体をどう見つけるか」について、登壇者の一人である熊倉さんは、「ピアレビューの前にお互いの活動を紹介し合う時間を設けることがポイント」だと言います。芸術文化に関する活動を行っている団体は草の根かつ小規模であることが多く、WEB上に詳細な活動情報が掲載されているケースは稀です。そこでまずは、ピンとくる団体にアポをとり、事前に対話しながら信頼関係を培うことから始めてみてもいいかもしれません。情報を交換する中で、活動規模や活動期間、参加者の層など共通項を見つけ、あくまでも当事者同士が満足できる情報を共有し合うことがピアレビューでは重要です。さらに熊倉さんは、「ピアレビューがしたいときに、類似の団体をマッチングさせてくれるような、相談できるアーツカウンシルが必要」とコメントを寄せました。

日々現場に邁進する孤独な実践者たちにとって、自分たちと似た活動をしている他者の存在は励ましになります。最後に、ハブの企画統括である森さんは、「近くにいる仲間同士が分かり合うことで地域のレジリエンスは高まる。そうして当事者たちが繋がると、イベントといった一過性のものもだんだんと地域の日常の活動に変わっていくのではないか」とピアレビューの先にある展望を述べました。

「すみだ川アートラウンド・ハブ」開催概要
講座名:対話と支え合いの評価手法 ピアレビュー入門!すみだ川アートラウンド・ハブ― 評価を通じて文化活動が出会う
日時:2023年7月22日(土)14:00~15:30
場所:東京藝術大学千住キャンパス
登壇者:熊倉純子(東京藝術大学 教授)、若林朋子(プロジェクト・コーディネーター/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授)、森隆一郎(合同会社渚と 代表社員 / アーツカウンシルさいたま プログラムディレクター)
講座運営:岡田千絵、吉田武司 ※敬称略