ラウンドテーブル ARTs×SDGsの可能性をめぐる対話と実践 隅田川を舞台に展開するSDGsプロトタイピング
第一章:サーキュラー・ダイアローグ vol.2 食 Food cycle レポート(2)
「食」が持つ「人をつなぐ力」を実感した
グループセッション
(2)グループセッションでは、全参加者を「A 水辺×文化」・「B 個×地域」・「C 食×地域」の3つのテーマごとにグループに分け、今後の構想を練っていきました。
熊倉教授・高橋さん・辻さん・大川原さんが参加した「A 水辺×文化」では、隅田川沿いで花守活動を行う参加者の方から、花ではなく食物を育てたい、食物のほうがより注目度が高まり、地域に活気が出るのではという声が挙がりました。現在、隅田川沿いの花壇スペースで食物を育てることは禁止されています。イギリス・トッドモーデンではじまった、まちの公共空間を「食べられる庭」に変えてしまうプロジェクト「Incredible Edible Todmorden」や、ニューヨークなどで地域住民が主体となって緑の空間を生み出す活動「コミュニティーガーデン」のように、地域の合意形成を得て、公共スペースで食物を育てるためにはどのような方法があるのかを模索しました。
清宮ディレクター・油井さん・伊藤さんが参加した「B 個×地域」では、外の世界・他の人の考えを知りたいという思いからラウンドテーブルに参加し、路上生活者の方の医療支援を経て、現在は不妊治療を研究している医学部の学生と油井さんの掛け合いが話題の中心になりました。実際に人と会うことを活動の原動力としているという医学生に対し、油井さんは特別な使命感を持たなくてもよいのではないか、活動を少しずつ持続させるために必要なことを行っていくだけでも十分であると述べられ、二人の対比が印象的な対話となりました。またアートマネジメントに長く関わる他の参加者の方からは、生きづらさではなく、生きやすさを作る回路をいかに設けるか、地域のことは地域の人が一番知っているので、地域の人と話す機会を多く作り、活動を行っていくことが今、重要ではないかという意見も出ました。
中山さん・笹川さん・渡邉さん・牛久さんが参加した「C 食×地域」では、たもんじ交流農園内にも雨水タンクがあることから、その雨水を凍らせ、寺島なすのジャムを添えて、かき氷として食べてみようという次に続くアイデアが生まれました。
参加者のお一人は、配布された雨水タンクの水を飲んでみて、そのまろやかな味に驚き、市販の水は販売されているものだから安全だという先入観に自身はとらわれているのかもしれない、水にも栽培野菜/山菜のような分類があればいいのにという感想を共有しました。日本で暮らす多くの人は、雨水に対する知識が少ないばかりに、雨水=危険と勝手にレッテルを貼り、わざわざ海外から水を輸入し、ミネラルウォーターとして消費していることも多いが、知識が高まれば、山菜のように雨水を今まで以上に活用する方法が増えるのかもしれないと今後の展開が期待できる話題も出ていました。