ラウンドテーブル ARTs×SDGsの可能性をめぐる対話と実践 隅田川を舞台に展開するSDGsプロトタイピング
第一章:サーキュラー・ダイアローグ vol.2 食 Food cycle レポート(3)

「食を媒体にすると、いろいろなことが、美味しく、まろやかにつながる」、いかに食を通して17のゴールにつながっていく経路・プロセスをデザインしていくか

全参加者がひとつの大きな円となった(3)「ラウンドテーブル」では、各々の多様な気づきが共有されました。基調講演に続き、今回も参加された方からは、食を媒体にすると、いろいろなことが、美味しく、まろやかにつながることを実感するとともに、基調講演で紹介された藝大SDGsのロゴの17色が重なった中心部を思い出し、いかに食を通して、17のゴールにつながっていく経路・プロセスをデザインしていくかが大切であることに気づいたという意見が共有されました。

食が持つ複数の可能性に気づいた数時間

全参加者の気づきが共有された後に、熊倉教授・清宮ディレクター・ファシリテーター 中山さんによるまとめが行われました。
熊倉教授は、「農」が私有の営農地や市民農園でプライベートなものとして行われるだけでなく、一緒に育てて一緒に食べるというコミュニティ感のあるものとなっていくことの可能性に言及しました。これを受けて中山さんも、「食」はある種占有する・あるものを破壊する一面もあるが、あえて公の場でのコミュニケーションや対話を促すツールとして用いることで、いろいろな人が交わる場作りのきっかけとなるとよいのではないかと話されました。熊倉教授はさらに、社会を変えていく共同作業の場について食を通じてもっと考えていかなければならない、格差のなかで新しい世の中のあり方が自分には関係ないと思っている人たちにも食を介すればアプローチしやすく、一緒に参画できるようになるのではないかと、食が持つ可能性を提示しました。
音楽イベントを多く手掛けてきた清宮ディレクターは、自身の体験を交え、お昼ごはんが特に重要だといいます。たくさんの人が関わるイベントではお昼ごはんによってスタッフのモチベーションが変わるそうです。忙しい日々では忘れていたが、今回、改めて食が活動を続けるためのモチベーションであることに気づいたと語りました。「vol.2 食 Food cycle」は、食が持つ複数の可能性に気づいた数時間となりました。

「vol.2 食 Food cycle」はシンフォニーを生み出しうるか

最後に、生演奏も交えながらバックサウンドを披露した小野龍一さんから今回の制作秘話が披露されました。今回のサウンドは、次の3つの工程から制作されたそうです。(1)各ゲストの名前のアルファベット表記を音に置き換えて、オリジナルのメロディーを作る→(2)隅田川のアルファベット表記を音に置き換えて、メロディーを作る→(3)(1)と(2)を組み合わせ、ひとつの音楽を作る。
今回の場で構想はまだ固まりきってはいません。全参加者が今後の展開を思い描くなかで、「食」が持つ「人をつなぐ力」・「アート」が持つ「人を巻き込む力」を生かし、いかにつながりをひろがりへ展開させていくかが今後の課題となりました。
30名弱の実感に、各々の知恵と技術が加わり、今回のセッションが今後どのように実装されていくのか、そして小野さんの音楽のように、いかにシンフォニーを生み出しうるか、今後の展開に期待したいと思います。

レポーター:松本知珠
写真:中川周