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ムジタンツクラブのアートなお祭り パート3!
〜ハロウィン編〜

2024年10月14日(月祝)

「ムジタンツクラブのアートなお祭り」の第3弾「ハロウィン編」を実施しました!

本企画は、アーティストや子どもたちが同時多発的に様々なあそびを繰り広げるカオスなお祭りです。パート1・2では、屋台をつくる「屋台村」や絶滅危惧種をモチーフに踊る様子が印象的でしたが、今回はハロウィンの時期に合わせてちょっぴり怪しげな衣装を身に纏った妖怪たちが登場したり、ラフマニノフのピアノ演奏に合わせて盆踊りが行われるなど、これまでと比べても段違いにカオスなお祭りとなりました!

今回も当日の様子を体験レポート形式でお伝えします。

実践の概要

日時:2024年10月14日(月祝)13:00〜16:30 ※出入り自由

会場:保木間小学校
参加費:無料

アーティスト
大西健太郎(ダンサー/パフォーマンスアーティスト)
永野光太郎(ピアニスト)
松岡大(舞踏家)
カニササレアヤコ、上川桂南恵、寺内天心、山野靖暁(東京藝術大学学生)
ほか

企画構成:ムジタンツ

実践レポート

リポーター:篠原美奈(東京藝術大学大学院博士後期課程、アトリエ・ムジタンツメンバー)

[目次]

1. スペシャルいばしょ工作「無限長屋」
2. For Rent(貸物件)
3. Let`s be モンスターズ!
4. 笙の妖怪
5. オリジナル盆踊り「百鬼夜行」
6. 茶屋&夜、光るかも?おばけ👻にがおえ
7. フィナーレ!「Memorial Rebirth 千住」
8. おわりに

1. スペシャルいばしょ工作「無限長屋」

お祭りがスタートすると、体育館にある「無限長屋」のコーナーに続々と子どもたちが集まってきます。何度かアートなお祭りに参加したことのある子どもも多く、「無限長屋」がスタートするまで大人たちとおしゃべりをしながら過ごしています。私がたまたま声をかけた小学3年生の男の子は、お祭り初回から参加しているとのことで「今日は屋台2個つくるわ」と気合十分な様子。

「てんてん」こと寺内天心さんと「けんちゃん」こと大西健太郎さんによる「無限長屋」では、子どもたちが様々な素材を使って自分の「居場所」をつくることができます。てんてんがお手本として、パイプ椅子にダンボールや筒、竹、紙テープなどをくっつけて、どんどん「自分にとって心地よい空間」をつくっていきます。けんちゃんは何やら段ボールを細かく裂いて藁のように見立てた素材をつくっています。その「藁」が欲しい人は自分でつくったカードを持っていくと交換してもらえるようです。アートなお祭りでは、ハンコを押してカードをつくり、それを用いてモノやコトを交換すること

が恒例となりつつあります。説明が終わると、子どもたちはパイプ椅子と竹を持って自分の場所を決め出しました。体育館の真ん中にはグランドピアノが置かれていたので、それを取り囲むようにどんどん組み立てられていきます。

しばらくすると完成した長屋でお店を始める子どもが現れ始めたので、お祭りに参加するのは2回目という小学2年生の女の子に話を聞いてみました。「今日は何を売ってるんですか?」「チョコバナナクレープ、りんご飴、わたあめ、うましお、全部ですね。あとグミも。」ダンボールや紙でできた商品を紹介してくれます。「この工作がとっても好きなので。」「どういうところが好きなんですか?」「組み立てるところ。」そう言うと、「友達の手伝いをするんだった。急がないと。」と忙しそうに別の長屋の方へ向かっていきました。

もう1人、手慣れた様子で準備を進める4年生の女の子に話を聞いてみました。「お祭りには何回目の参加ですか?」「3〜4回目。」「お祭りは楽しいですか?」「なんか、お店つくったりするのが楽しい。」「今日も何か持ってきてるんだね。準備してきたの?」「うん。1ヶ月前くらいから。」インタビューを受けながら、使い捨てコンタクトレンズのケースを使ってつくられた「宝石」やペットボトルのキャップを使った「おみくじ」などをたくさん並べていきます。前回は屋台の準備に時間がかかってしまいお店で売る時間があまりなかったとのことで、今回は事前に準備をしてきたようでした。

これまでは、その場でアーティストから説明を受けてあそんでいた子どもたちが、今回は自分たちがあそびたいように準備してきたり、お店を出したり、他の子どもたちと交流したりするなど、より自由にのびのびと動いているように見えました。はじめて参加した子どもたちもその様子につられて「勝手にあそんでいる」様子は、子どもたちが公園の砂場ではあそび方の説明を受けずとも各々が勝手にあそび出すような、そんな景色と重なりました。

2. For Rent(貸物件)

体育館の片隅には何やら空きの屋台と「For Rent(貸物件)」と書かれた看板があります。その隣では無料で、はちみつレモンソーダやはちみつレモンティーをいただける屋台もあり(とっても美味しい!)子どもも大人も集っています。山野靖暁さんによるこちらのコーナーでは、美味しい飲み物を飲みながら山野さんとおしゃべりをしたり、希望があれば空きの屋台を借りることができます。

さっそく屋台を使いたいという申し出がありました。しかし、申し出た矢先から隣で飲み物を提供する山野さんの手元に興味津々で、そちらに気が移っていきます。「やりたい!」と言うので、山野さんは飲み物をコップに注ぐ役割をその子にお願いしました。

しばらくすると、今度は女の子2人が屋台に座り、飲み物を提供していました。山野さんは少しの間席を離れているようで、2人だけでお店を回しています。2人は小学2年生と3年の姉妹で参加していて「暇だったからこのお店をやっています」とのこと。そう言いつつ、もう自分たちのお店のように飲み物を用意して、メニューの紹介をしたり、ゴミ箱の場所も教えたりしてくれました。

3. Let`s be モンスターズ!

ここはハロウィンの仮装や飾りをつくったり、オリジナルの盆踊りの練習をしたりするコーナー。部屋に入ってまず目に入るのは、「だいだい」こと松岡大さんの奇抜な衣装!頭には水色と黄色のふわふわとしたお花のような帽子、そこから長い紙テープがたくさんぶら下がっています。子どもたちは自分でも好きな衣装をつくることができ、お祭りがスタートするとだんだん衣装を身に纏った子どもたちが増えていきます。だいだいと同じ材料を使って、違う形の帽子をつくったり、違う色の紙テープをたくさんぶら下げて、知らず知らずのうちに小さな妖怪がお祭りに紛れてきていました。

テーブルには様々な日本の妖怪の絵が置かれていて、子どもたちはそれを見ながら真っ白のTシャツに絵を描いていきます。出来上がったTシャツを着て、だいだいと一緒に踊り始めると、猫の仮面を被った音楽隊が怪しげなリズムを奏ではじめ、この後みんなで踊るオリジナル盆踊り「百鬼夜行」に向けて士気を高めていきます。

4. 笙の妖怪

今回は、「笙の妖怪」となったカニササレアヤコさんが初登場。気まぐれにお祭りを徘徊し、子どもたちを驚かせ、そして笑わせます。笙の音を生で聴くのがはじめてだった子も多いかと思われますが、そのインパクトに引けを取らないのが、カニササレさんのなんともリアルな妖怪の装い。まるで妖怪の登場のモチーフのように響く音色と迫真の演技に、子どもたちも飛びついて喜んでいます。盆踊りの時間の前には、ピアノと笙の即興セッションがひっそりと立ち上がり、体育館であそぶ子どもたちを包み込むような音響が空間を彩りました。

 

5. オリジナル盆踊り「百鬼夜行」

午後2時半、いよいよ「百鬼夜行」が始まります。体育館中央にあるグランドピアノの演奏が始まり、怪しげな雰囲気の音色が響き渡ります。楽曲はラフマニノフの「前奏曲」。ピアニストの永野光太郎さんによる演奏です。

演奏に誘われて妖怪たちが集まってくると、ピアノを囲って輪をつくり踊り始めました。
しばらくすると、黒いジャケットを着たMCの「ナカーノ」がマイクを片手にお立ち台に立ち、「さぁさぁさぁ….. レディース&ジェントルメン。We now presents ムジタンツ・オリジナル・ボンダンス!」。パーティーのようなお祭りのような、あるいは八百屋の露店ような(!?)呼び込みで盆踊りの始まりを告げます。

踊りの振り付けはとてもシンプル。「前・後ろ・前前前 上・下・上・下・パンパンパン」ナカーノの掛け声に合わせて身体を動かすと、不思議とラフマニノフの複雑なメロディーにピッタリとハマっていく感じがします。ピアノの低音が奏でる「ズン、ズン、」という重たいリズムが、盆踊りの独特なリズムの取り方と少し似ているのかもしれません。「シャンシャン」と時折聴こえる鈴の音も怪しげな妖怪たちの行進を連想させます。

お祭りに参加している子どもの中には「人前で踊る」ということに恥ずかしさを感じてしまう子も多いようでしたが、この「百鬼夜行」はハロウィンのパレードのように、仮装をしてみんなで練り歩くような雰囲気があり、恥ずかしそうにしている子どもがいつもより少ないように見えました。終始楽しげな様子で、中盤は輪になった状態で前の人の肩につかまり、「竜」のように一つになってみんなでぐるぐると周っていました。

一方で、盆踊りの輪が盛り上がりを見せている中、その様子を傍目に淡々と「無限長屋」のコーナーで長屋をつくっている子もいました。あるいは、盆踊りを踊っている笙の妖怪に輪の外側からちょっかいをかける子も。それぞれの立ち位置から、それぞれのあそび方で、不思議な「百鬼夜行」の時間を過ごしていました。

6. 茶屋&夜、光るかも?おばけ👻にがおえ

ちょっとした一休みができる「茶屋」があることもアートなお祭りのお馴染みです。特に体育館は常にカオス!大人も子どももほっと一息つきたい時は小学校の別の教室に設置されている茶屋を訪れます。お菓子を食べながら「次は何する?」と保護者の方とお子さんがのんびりお話しされていました。

その側には、上川桂南恵さんが子どもたちの似顔絵を描いてくれるコーナーがあります。「自分の絵を描いてくれる」というのはなんとも魅力的で、見つけた子どもたちが「描いて欲しい!」とお願いしています。子どもが似顔絵を描いてもらっている間、保護者の方も嬉しそうな表情をされているのが印象的でした。

7. フィナーレ!「Memorial Rebirth 千住」

午後4時、「百鬼夜行」が行われた体育館の熱気とは裏腹に、外は日が落ちはじめ、大人たちが上着を羽織りはじめました。お祭り最後のプログラムは、無数のシャボン玉で見慣れたまちを光の風景に変貌させ、記憶を喚起するアートパフォーマンス「Memorial Rebirth 千住」。「メモリバ」の愛称で、千住や西新井など足立区内の様々な地域で親しまれており、何千人規模の大きなイベントから、地元のお祭りへの出演、子どもたちへ向けた小さな場づくりまで行う地域密着型のアートプロジェクトです。

アートなお祭りで「無限長屋」をしている大西健太郎さんは、メモリバでは「しゃボンおどり」というオリジナルの盆踊りを地元の日本舞踊の先生やアーティストユニット「くるくるチャーミー」のメンバーと共に振り付けしています。この日は「百鬼夜行」につづき、「しゃボンおどり」のレクチャーがはじまり、まさに「盆踊り祭り」状態です…!

簡単なレクチャーが終わると体育館のドアがひらかれ、輪をつくっていた列のままドアの方へ誘われます。ドアの向こう側には校庭が広がり、20mほど先には白いマシンからシャボン玉がたくさん出ていました。そこまでの道筋には黒いシートがひかれ、子どもたちは上履きのまま歩いていきます。最初は「しゃボンおどり」を音楽に合わせて踊っていた子どもたちも、シャボン玉が見えるとそっちに夢中になってしまいました。踊りやシャボン玉を楽しみながらマシンをゆっくりと一周し、体育館の方へ戻っていきます。

お祭り終了後、片付けを終えた子どもたちが帰路に立つ道すがら、おまけでもう一度シャボン玉が上がっていました。子どもたちが名残惜しそうにその周りを囲う様子は、1日の最後を告げる小さなキャンプファイヤーのようにも映りました。

8. おわりに

盛りだくさんの内容となった「ムジタンツクラブのアートなお祭り」第3弾「ハロウィン編」。前々回から継続しているお馴染みのプログラムから、ラフマニノフの盆踊り「百鬼夜行」などの新しいプログラムまで、目白押しの1日となりました。

アートなお祭りの場に慣れている子どもが増えてきて、受動的にプログラムに参加するのではなく、居たい場所で、やりたいことをやり、逆にやりたくないことはやらない。子どもたちが「こうしよう」と意思を見せる機会が多くなり、お祭り全体がより有機的にまわっていたように感じました。

子どもとって安心安全でありながら、それでいて冒険ができる。現代社会において、そのような環境は減りつつあるのかもしれません。アートなお祭りは1日限りの非日常ですが、その日感じたことが、子どもたちにとっても周りの大人にとっても日常に繋がっていくものであるために、私たちに何ができるのか。改めて考えるきっかけとなるような1日でした。

アートマネジメント人材育成事業について

今回のプログラムは、文化庁 大学における文化芸術推進事業(アートマネジメント人材育成事業)の一環として、アートを専門とするファシリテーターの育成にも取り組みました。アートマネージャーや演奏家、芸術大学学生、ワークショップやプログラムコーディネートに関心のある方、足立区でこども支援を担う施設職員や一般社団法人の方々を対象に、当日はアシスタント・ファシリテーターとして実践を経験していただきました。

受付などの運営面だけでなく、演奏や進行の補助、子どもたちとコミュニケーションを行うなど、多様な関わりしろをつくることで、それぞれの経験したいこと、学びたいことを吸収してもらえるような場となることを目指し、プログラム設計を行いました。

ムジタンツとは

音楽(Musik)とダンス(Tanz)を組み合わせた造語です。
音楽を専門にする酒井雅代と、身体表現を専門にする山崎朋がお互いの専門性を持ち寄り、音楽とダンスを融合させた新しい形のワークショップを開発。クラシック音楽の作品を、聴いて、遊んで、楽しみ、探求する講座として、2018年に東京藝術大学一般公開講座「藝大ムジタンツクラブ」としてスタートしました。身体を動かし、音楽を体感しながら、作品との「対話」を目指すとともに、音楽活動を通して、価値観や創造力を広げられるようアプローチしています。

企画・構成:ムジタンツ
主催:東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科
共催:東京藝術大学キュレーション教育研究センター「東京藝大×みずほFG『アートとジェンダー』共同研究プロジェクト」
後援:足立区
協力:足立区立保木間小学校、あだち子ども支援ネット、ポルテホール連絡協議会

この事業は「令和6年度 文化庁 大学における文化芸術推進事業「すみだ川アートラウンド」〜ARTs×SDGsでつながる隅田川流域の民間組織コレクティブ化構想」の一環として開催します。
本イベントは、JST 共創の場形成支援プログラム「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」(JPMJPF2105)、東京藝術大学 I LOVE YOUプロジェクトの支援を受けたものです。