▼まとめ
さて、3年間のラウンドテーブルの活動も一区切りを迎えることとなりました。多くの実践者とともに「再生可能エネルギー」「食」「モビリティ」という3つの切り口からアートとSDGsの関わりを考えた初年度、具体的な実践として「給電できる移動式屋台」を製作した2年目、そしてこの屋台のひとつの具体的な活用方法として「移動式工作室」に取り組み、また官と民とで対話を行った3年目。
「移動式工作室」は「給電できる移動式屋台」の活用事例のひとつでしたが、子どもたちにとって新たな交友関係を育む場、アーティストという知らない大人と緩やかなおしゃべりの場として確かに機能していました。こんなコミュニケーションもSDGsの一要素ではないでしょうか。
つい先日、2025年3月2日に墨田区両国で行われた「隅田川オープンテラス with すみだ川アートラウンド」は、アートラウンドの事業のひとつである「ハブ」チームとの合同企画でしたが、この際にも、来場者にこの屋台の活用方法を呼びかけてみました。すると、「DJブース」、「お弁当販売」、「藤棚」など早速いくつかのアイデアが…

「給電できる移動式屋台」は、ソーラーパネルを搭載しているという意味では1年目の3つの切り口のうち「再生可能エネルギー」ともっとも近いものかもしれません。ですが、この屋台、使いようによっては様々な活用ポテンシャルのあるものでもあります。移動できる強みを生かしたり、電気を使ってみたり、これをお読みの皆さんだったらこの屋台にどのようなSDGsを搭載するでしょうか?
それにしても、私たちはひとつ思うことがあります。隅田川流域には東京都とそして7つの区があり、いままさにソフト面への取り組みを推し進めようとしています。また、3年間の間、私たちはいくつもの企業、NPO等の民間の実践者の皆さんによる豊かな活動を目の当たりにしてきました。こういった、共に隅田川を考える人々をもっと有機的な回路で繋ぐことが今求められているのではないでしょうか?
中間支援組織が注目を集めています。人によってはあまり聞き慣れないかもしれないこの中間支援組織という言葉、内閣府は「NPOを支援するNPOといった存在であるが、いろいろな捉え方があり、必ずしも明確に規定された定義があるわけではない」と断りつつ、次のように定義をしています:
多元社会における共生と協働という目標に向かって、地域社会とNPOの変化やニーズを把握し、人材、資金、情報などの資源提供者とNPOの仲立ちをしたり、また、広義の意味では各種サービスの需要と供給をコーディネートする組織
内閣府NPOホームページ「平成13年度 中間支援組織の現状と課題に関する調査」
文化の分野では、2007年のアーツコミッション・ヨコハマ立ち上げを嚆矢としたアーツカウンシルと呼ばれる中間支援組織の設置が日本各地の都道府県や市で進んでおり、2022年までに20近くまで拡大してきました。アーツカウンシルの役割は多岐にわたっていて、芸術家・芸術団体を対象とした相談業務や助成事業、人材育成といった中間支援機能に加え、調査研究を行うシンクタンク機能、現場への理解に基づく政策・戦略の立案機能などが期待されています。2023・2024年度の日本文化政策学会では各地のアーツカウンシル職員が集まって、その存在意義や役割をディスカッションする機会が持たれるなど、今現在に至るまでホットな話題です。
本事業「すみだ川アートラウンド」の前身にあたる「Meeting アラスミ!」が3年間にわたる活動の結びとして行った「未来へ結ぶ座談会」においても、実はこのアーツカウンシルについて議論されました。
Meeting アラスミ! 未来へ結ぶ座談会
https://arasumi.geidai.ac.jp/theory/discussion/
さて、話を「すみだ川アートラウンド」に戻しましょう。
先ほど述べた通り、東京都建設局河川部や東京都公園協会の方々がまなざす水辺利活用のビジョンがあり、それとはまた別に民間レベルでは実に様々な活動実践が流域で積み重ねられてきています。3月2日のクルーズ・シンポジウムはまさしくその両者が出会う機会となりました。わずか1日、たった2時間のディスカッションではありましたが、もしこれがヴォッヘン・クラウズールのように2週間、いえ、もっとその先もずっと継続してディスカッションを行い、官民が一緒になって活動を深化させていく「有機的な回路」を作っていくことができたら。例えば、河川部や公園協会による水辺イベントの情報を地域により広めていくような情報体制を整えた結果水辺の賑わいが一層色とりどりのものとしたり、企業やNPOのアイデアを具体的な戦略として行政に提言したりというように展開していくことも可能なのではないでしょうか。しかし、そのためには官民両方に通じた、専門的な仲介者がいるにしくはありません。中間支援組織/アーツカウンシルというのは、その大きなヒントであるような気がします。私たちラウンドテーブルチームの3年間の活動から得られた今後の展望として、この中間支援組織というものに特に注目をして、レポートを閉じたいと思います。
参考文献
文化コモンズ研究所「中間支援組織「地域アーツカウンシル」の現場が眼差す文化政策の未来[前編]」https://ifcc.jp/colum/SI01
吉本光宏「地域アーツカウンシル-その現状と展望」https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53306?pno=1&site=nli
注)「すみだがわオープンテラス 2024 with 汐入公園」(10月5日)はラウンドテーブルとして参加を予定していましたが、雨天のため叶いませんでした。
レポーター:藤枝 怜
光と色の工作室 ─ 屋台をデコレーションしよう!
日程
2024年10月19日(土)、2025年2月23日(日)、2月24日(月休)、3月2日(日)
※10月5日(土)は雨天のため中止
会場
隅田川テラス及び宮前公園(荒川区)、あらかわ遊園(荒川区)、新田さくら公園(足立区)、両国リバーセンター発着場(墨田区)