団体紹介2:らんたん亭
らんたん亭と2つのキーワード

らんたん亭は、足立区に位置する築約60年の古民家をDIYでフルリフォームした、中高生のための居場所です。2021年にオープンし、「いばしょ」と「きっかけ」という2つのキーワードを掲げ、4つの活動を展開しています

引用元:発表者資料

まず「いばしょ」の活動は、家庭の中に居場所がないと感じている中高生にとって、安全基地となるような場を目指しています。たとえば、「隠れ家酒場 –rantan-」は、中高生たちがボランティアスタッフとして厨房やホールの業務に関わりながら、お客さんとのコミュニケーションも楽しむという活動です。そして、日頃十分な食事をとることが難しい中高生スタッフのために、毎回まかないが振る舞われるそうです。この活動は、本来拠点の運営費を補填するために始まりましたが、飲食業に興味のある中高生の就労支援にもなっています。

つぎに、「きっかけ」の活動では、子どもたち自身がやりたいこと・わくわくすることを発見できるように、外部の人々とコラボして様々な体験を提供しています。活動のひとつである「表現の場」は、アーティストに場所を貸し出し、展示や公演などを開催するというものです。古民家という場所の特性を最大限に活かし、地域の方々と中高生たちがくつろぎながら表現を楽しめる機会をつくっています。

居場所づくりを始めたきっかけ

らんたん亭代表の中島正行さんは工学部出身で、大学卒業後は家電量販店で営業職に就いていました。一方で、ご自身が中高生のころに居場所のなさを感じていたことや友人たちが孤独感や無気力に苛まれていたことをどうにかしたいという思いを抱き、一念発起しらんたん亭の立ち上げに取り掛かりました。

中島さんは写真家としても活動されていますが、写真を撮り続ける中で生まれた「なにを自分は映し出したいのか」という問いが自分自身と向き合う転換点になったそうです。このような経験から「自分と向き合い、人と繋がる、対話の広場」として、表現活動を取り入れた居場所づくりに至っています。中島さんは、「表現は能動的な学びを促すきっかけであり、能動的な学びはどんな場面でも生きる知恵になっていく」と語ります。実際に、らんたん亭で行われた創作プログラムを通じて、音楽や木工といった分野に関心を持ち、関連した進路を選ぶ子どもたちもいると活動の波及効果についても述べました。

(撮影:中川周)

足立区の中高生支援の現状とらんたん亭の課題

らんたん亭が位置する足立区は貧困世帯も多く、それに伴いこども食堂も多い地域です。しかし、中高生支援は手薄であったことから、「ユースサポートネット」という中高生支援者団体間の連携体制が整えられました。ユースサポートネットでは、強みの異なる支援団体が定期的に情報交換を行い、中高生個々人の問題や状況に即した支援を行っています。らんたん亭もこのネットワークに参加し、団体間との連携を活かしながら活動を広げています。

最後にらんたん亭の運営の課題として、安定的な拠点運営の難しさが挙げられました。まず、家賃をはじめとする運営資金は、寄付金とレンタルスペース料、居酒屋の収益を合わせても賄うことができず、運営資金の約70%が中島さんの個人収入によって補填されています。また、恒常的に運営に携わっているメンバーは中島さんを含め2名と、マンパワーが足りない実状が切実に語られました。