路上と身体表現:LAND FES(江東区)×谷中のおかって(台東区)

プログラム後半は「路上と身体表現」をテーマに、障がい者や路上生活経験者など、さまざまな背景を持つ人々との共創的なワークショップを実施する2組〈LAND FES〉〈谷中のおかって〉とのピアレビューを行いました。

〈NPO法人LAND FES〉は、2011年にダンサーの松岡大さんが立ち上げ、街をツアーしながら、ダンサーとミュージシャンによるライブセッションを体験するウォーキング形式のパフォーマンスイベント「LAND FES」を主催してきました。また、2014年からは障がいを持った子どもたちや地域住民を対象にしたワークショップとクリエーションをはじめ、2021年・22年には「LAND FES DIVERSITY 深川」を開催しました。

今回登壇した〈LAND FES〉ディレクターの安藤誠さんは、特に「LAND FES DIVERSITY 深川」について「深川のランドスケープは非常に多彩。運営に協力してくれている現地スタッフの方が店を構えるアートギャラリーの隣には相撲部屋があったり、川が流れているので都心とは思えないほど空が広い」と言います。また「プロジェクトをこれだけ続けていけるというのにも理由があるはずなんです。それは何かというと、個人的に考えてみれば『旧』と『新』がモザイク状に混じり合っていることが深川の大きな魅力なのではないかと思います」と話しました。

というのも、主宰アーティストの松岡さんと安藤さんが二人三脚で運営してきた同団体は、これまで特定の拠点を持たず、国内各所で「ダンサーとミュージシャンが観客と同じ地平に立つ」パフォーマンスを展開してきました。その軽やかな体制の一方、「LAND FES DIVERSITY 深川」やコロナ禍以降の映像配信プログラムを通して新たな課題も見つかり、すでに地域住民や在勤者がメンバーにいるけれども「もっともっと多様な人々を巻き込んでいきたい」と安藤さんは語ります。「課題は色々あるが、街自体に多様なエレメントを包容する力が、素地がこの街にはある。自分たちのやり方でもっとそれを良くしていけるはずだし、もっともっとアイデアが欲しい」から、まだ見ぬ人と出会いたいと話します。

かたや〈谷中のおかって〉は、上野のすぐ隣にある谷中エリアにある彫刻家・平櫛田中の旧アトリエを拠点に活動している一般社団法人です。東京藝術大学の卒業生を中心に、アーティスト・アートマネージャーが集い、子ども向けの創作教室や、若手アーティストの育成事業などを手がけています。今回の発表では、中でも2016年から続くアートプロジェクト《バラエティロードSANYA》を紹介していただきました。

《バラエティロードSANYA》では、日本三大ドヤ街としても知られる山谷を舞台に、アーティスト・きむらとしろうじんじんの《野点》や、NPO法人山友会の協力のもと、路上生活経験者と協働した「文化出見世」が並ぶ、一日限りの路上のささやかな祭典を実施しています。

通りすがりの人でも参加できる、ビールケースをステージにした路上カラオケパフォーマンスや、普段は子どもたちとの接点を持ちづらい路上生活経験者のメンバーが手作りの人形をプレゼントする屋台、路上の猫を観察しにめぐるツアー、腕相撲大会など、さまざまな「文化出見世」を企画段階から参加者やスタッフとともに考案し、登壇した事務局長の渡邉梨恵子さんは、『魅力の予感を頼りに出店を出しながら、一日この路上でゆっくり過ごせるような場をひらいている』と話しました。2022年度は、同じエリアにある地域包括支援センターとの関わりも生まれ、さらに福祉やケアの文脈との繋がりを深めたと言います。